【part2】セルフマネジメントに関する考察(フローの入り方①)

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前回の記事(【part1】セルフマネジメントに関する考察(グランドデザイン設計の重要性) - 戯言〜caractère venteux〜)では個々の行動に意味づけを行うためのグランドデザイン設計の重要性について考察した。第2回目は『フローの入り方』というテーマで書いていこうと思う。"フロー"という言葉はハンガリー出身のアメリカの心理学者ミハイ・チクセントミハイが提唱した概念で、wikipediaによるとフローとは次のように説明されている。

人間がそのときしていることに、完全に浸り、精力的に集中している感覚に特徴づけられ、完全にのめり込んでいて、その過程が活発さにおいて成功しているような活動における、精神的な状態をいう

うーん、それって単に集中してるってことなんじゃないの?とも思えるが、実際はもう少し高次のもののようだ。フローはゾーンやピークエクスペリエンスとも呼ばれる。人によってはゾーンを、フロー状態から一時的に発生する極限の集中状態だと説明している人もいるようだ。よくアスリートが集中して研ぎ澄まされた状態を指してゾーンと呼んでいることも多い。part2およびpart3は、この「フロー」と呼ばれる状態を作り出すための環境設定ついて考察する。

 フロー状態とは何か?

さて、まずフロー状態とは何なのかについてだが、僕がゴチャゴチャ説明するより「フロー」という概念の提唱者であるミハイ・チクセントミハイのTEDでの講演を見てもらったほうが手っ取り早いと思う。

要するに人間は単位時間に処理できる情報量が決まっていて(およそ毎秒110ビットが限度)、その処理能力をフルに使って目的の対象に取り組んでいるような状態がフロー状態だと言うことできそうだ。そのとき、もはや自身の身体やそれを取り巻く環境を意識できる注意力すら残されていない。すなわち忘我(エクスタシー)である。まるで身体が対象と一体化したような感覚、まさに身体の延長とでも言うべき現象である。

 どのようにフロー状態を作り出すか

ミハイは、人がフローに入るための条件には7種類あると考える。

  1. 明確な目的がある
  2. 活動に本質的な価値がある
  3. 能力と難易度のバランスがとれている
  4. 状況や活動を自分でコントロールしている
  5. 自分の存在の忘却
  6. 時間の感覚の消失
  7. ただちにフィードバックが得られる

もちろんこれら全ての条件が必要なわけではないが、少なくともフロー状態にはこれらの構成要素があると思われている。1や2の「明確な目的がある」「活動に本質的な価値がある」の項目は第1回のセルフマネジメントの考察によって解決しうる条件であると思われるので、3~7の項目について考察する

能力と難易度のバランス(項目3)

能力と難易度のバランスについてはミハイ自身も用いた次のグラフが役に立つ。

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中心点が平均的な精神状態であり、取り組んでいる対象の難易度と自身の能力によって精神状態が変わる。自分の精神状態に応じて、能力を上げるべきなのか、難易度を上げるべきなのかを考えるのはフロー状態に入るための良い実践となりそうである。

「忘我」と「注意力のコントロール」(項目4~6)

項目4~6の条件について考えるために、まず我々の脳に備わる2種類の注意システムについて説明する。1つ目は「ボトムダウン型注意システム」であり、これは周囲に向ける注意の方式で、人類が進化の過程で安全を確保するために備わったものである。特に明るい光・目立つ色や大きな音を聞いたときにこの注意システムは働く。一度集中力が切れると再び集中するのに15分から25分かかると言われている。2つ目は「トップダウン型注意システム」。これは特定のものに集中できる能力であり、意思によってコントロールされうる。フロー状態に関連する注意システムはこちらである。

すなわち我々がフロー状態に入るには、まず第一に外的環境を整えボトムダウン型注意システムに入らないようにする必要がある。

■ボトムダウン型注意システムに入らないようにする工夫

とにかく余計な情報、余計な選択、過去や未来に振り回されない環境を作ればいい。具体的には次のようなものがある(まあ当たり前のこと)

  • ヘッドフォンや耳栓をして騒音をなくす
  • デジタル機器の通知をオフにする(特にtwitterな)

特にデジタル機器の通知は結構怖い(ツイ廃の感想)。人間が行動するとき、たとえそれが嫌な作業であっても、実際にやってみると夢中になってしまったりすることがよくある。ましてや興味のあることが飛び込んできたりしたら集中力なんて無に帰す。とにかく気が散る原因を突き止めることが肝要である。

次回予告

思ったよりも分量が多くなりそうだったので「トップダウン型注意システムに入り持続するための工夫」については次回のテーマにしようと思う。主なトピックは次のようなものを考えている。

  • 集中に入るための儀式(ルーティーン)
  • マインドフルネスによるメンタルトレーニング
  • マイクロ・バースト・エクササイズ
  • 食事で脳のコンディションを向上させる

お楽しみに!