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Ascoli-Arzelàの定理

 最近学部2年の『集合・位相演習』のTAをしてるんすよ。演習の問題で「Ascoli-Arzelàの定理」を用いる問題があったので、ちょっくら復習してみたいと思う。この定理は僕が学部の頃、常微分方程式論の講義かなんかで初期値問題に対する「Peanoの存在定理」を示すときの補題として導入された覚えがある。気持ちとしては1階正規型方程式の初期値問題

\[ \frac{dx}{dt}=f(t,x), \ \ x(t_{0})=x_0 \]

(ただし \(\Omega \subset \mathbb{R}^2\):domein、\(f:\Omega\to \mathbb{R}\))

を考えるときに、\(f\)がLipshitz連続の場合には解の一意性だけでなく一様収束するような近似列を具体的に構成できたが、\(f\)がただ連続である場合には一意性が成り立たなだけでなく具体的に一様収束する近似列を作れないので、そこでAscoli-Arzelàの定理を利用して解の存在を示すいう筋だったと思うが、詳しいことはそのうちにして(というか忘れてる)、とりあえずAscoli-Arzelàの定理の主張を見てみたい。僕が初めてAscoli-Arzelàの定理を見たときはだいたい点列コンパクトの関数空間版みたいなもんでしょと思って特にそれ以上精密に見ていこうとはしなかったが、実は"だいたい"あってる。"だいたい"というのは実はAscoli-Arzelàの定理においては点列コンパクトではなく相対点列コンパクトにおける定理であるという点である。いくつか定義を述べておく:

[定義1] \(X\)を距離空間とする。このとき部分集合\(K\subset X\)が相対点列コンパクトであるとは、\(K\)の任意の点列は\(X\)のある点に収束するような部分列を持つような集合のことである

[定義2] \(X\)を位相空間、\(Y\)をノルム空間とする。\(X\)から\(Y\)への写像の族\(\{f_{\lambda}\}_{\lambda \in \Lambda}\)が一様有界であるとは
\[\sup_{\lambda\in \Lambda}\sup_{x\in X}\|f_{\lambda}\|_{Y}<\infty \]が成り立つことである

[定義3] \((X,d)\)を距離空間、\(Y\)をノルム空間とする。\(X\)から\(Y\)への写像の族\(\{f_{\lambda}\}_{\lambda \in \Lambda}\)が同程度(一様)連続であるとは
\[\lim_{\delta\downarrow 0}\sup_{\lambda\in\Lambda}\omega_{\delta}(f_{\lambda})=0 \]が成り立つことである。ここで\(\omega_{\delta}(f)=\sup_{d(x,y)<\delta}\|f(x)-f(y)\|_{Y} \)である

さて以上の準備の元でAscoli-Arzelàの定理は次のような関数空間に対する相対点列コンパクトの特徴付けとなる。\(X\)をコンパクト距離空間、\(Y\)をバナッハ空間とする。\(X\)から\(Y\)への連続写像全体の空間\(C(X,Y)\)には
\[\|f\|_{\infty}=\sup_{x\in X}\|f(x)\|_{Y} \]
という一様ノルムによってバナッハ空間となる。このとき次のことが成り立つ

[Ascoli-Arzelàの定理] 部分集合\(\{f_{\lambda}\}_{\lambda\in \Lambda}\subset C(X,Y)\)について次は同値:
(1)\(\{f_{\lambda}\}\)は相対点列コンパクト
(2)\(\{f_{\lambda}\}\)は同程度連続かつ各\(x\in X\)に対し\(\{f_{\lambda}(x) \mid\lambda \in\Lambda\}\)は相対コンパクト

書き洩らしたが、相対コンパクトとは閉包がコンパクトとなるような集合のことである。あれ?条件に一様有界ってついてないじゃんと思ったかもしれないが、その通り。それは十分条件であって、実際は各点で有界であればいい。僕が初めに考えたことは同程度連続で各点で相対コンパクトなら関数\(g(x)=\sup_{\lambda\in \Lambda}\|f_{\lambda}(x)\|\)が連続となり、\(X\)がコンパクトだから一様有界が示されるのかと思ったが、そういう筋ではないようだ。というか示そうと思ってもちょっと思いつかなかった。証明、もしくは反例が思いついたらコメントにでも書いて教えてほしい。ちなみにAscoli-Arzelàの定理の証明はここではしない。別のところでもしないかもしれない

 

書き忘れてたけど、実はAscoli-Arzelàの定理は定義域\(X\)の条件をコンパクト距離空間とまで言わずとも、コンパクトハウスドルフというだけでも成り立ちます。たとえば位相群は必ずハウスドルフになることからコンパクト群上の関数空間に関してAscoli-Arzelàの定理が成り立つわけだが、それを用いて不変測度の構成などをしたりする。次はそれについて少し書いてみようかしら。いや書かないかもしれない

 

TeXコマンド備忘録

• \left.\frac{d}{dt}\right|_{t=0}\exp(-tX)\cdot mと書くと

\[\left.\frac{d}{dt}\right|_{t=0}\exp(-tX)\cdot m \]

が表示される。「\left.\frac{}{}\right|」の部分がポイント